婚約破棄されたら、高貴な紳士に極上な愛を注がれました。
「陽鈴ちゃん、元婚約者が到着したらしいよ」
「そうですか。いまさらですが本当に来たんですね、あの人」
今回、元婚約者が来たのは透冴さんが招待状を出したからだ。
普通なら、自分から婚約破棄をした相手がいると分かっていて参加するとは思わないがあの人は普通じゃないことが多いから今回もそれなんだろう。
「義妹だったか、同伴者として彼女も来ているよ。それに、会場入りして俺の妻だと知らない様子だ」
「あはは……相変わらずなんですね、あの方は。変わっていない」
「他の男の話は聞きたくないな、陽鈴ちゃん」
「すみません! 私はもう貴方のものですよ」
「そうだな。もうとっくに君は俺のだ……この指輪も一番愛していることの証拠だ」
彼は私の手を取り、左手薬指に光る指輪に触れた。
「……さぁ、行こうか。会場に」
「はい、透冴さん」
客室から出ると、私たちはパーティー会場となっている大ホールへと向かった。