婚約破棄されたら、高貴な紳士に極上な愛を注がれました。

 
「……あら、霜田さま。お久しぶりでございます」


 きっとこのパーティーに参加する人は大体は、私が目の前の男と元々婚約関係だったことを知っている。だって、コソコソと話し声が聞こえてくるから。


「そんなよそよそしい話し方しなくて良くない? あなたと、帆楽お義兄さまは婚約者だったのに!」

「以前婚約関係だったのは間違いないですが、幼い頃、父たちによって家のために結ばれた縁だったそれだけです。婚約破棄した今、元婚約者というだけで関係はありません」

「……っはぁ!? 許婚だったのに、関係ないって酷くない? 帆楽お義兄さまに振られて、結婚なんて出来ないくせに! あ、まさか西條さんを狙ってるの? そんな傷モノなんて――」


 元婚約者の腕に絡めながら莉来さんはマシンガントークを一人でしている。
 横にいる彼は何も言わない。というか、主催者である西條家……透冴さんのことも今日のパーティーの目的も知らないの?



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