婚約破棄されたら、高貴な紳士に極上な愛を注がれました。
「はぁ……関係は全くないですよ。だって――」
……婚約破棄したのだから、と言おうと思ったのだが知らぬ間に戻ってきた透冴さんに遮られて私が言うはずの言葉を言われてしまった。
「婚約破棄したのだから当然でしょう? 霜田社長令息、令嬢」
「……っな、に、西條社長……!?」
元婚約者の彼はそう声の主である透冴さんを見た。
「それに現在、霜田家が大変な事態に陥っているからって何故自ら婚約破棄をした彼女に近づくのでしょう? 取引先から全て契約白紙にされてしまったからよりを戻そうとしているのかな?」
「……!? なぜ、それを……っ」
「なぜ? 何故って、そりゃあ知ってますよ。知らない理由がない。愛する妻の元婚約事情は調査をしたからな」
透冴さんは私の腰に触れて引き寄せる。
「なんせ、十年は片想いをしている相手だ。君たちや周りが傷モノだと言うが、俺にとってはいつまでも純粋で可憐な愛しい人。君が婚約破棄をしたあの日、もうすでに彼女は幸せな花嫁になることが確定していた。その逆に、旧財閥家である高田家令嬢と婚約破棄をした君たちを含めた霜田家はどん底に落ちることが決まっていたよ。それにね、君たちが愛する妻を貶し、悪評をながしたことが裏目に出たね。旧高田家と歴史が数十年の霜田をどちらが信じるかは一目瞭然だと思うよ」
元婚約者と莉来さんが流したとされる私への悪評は透冴さんから報告されていたので一応聞いていた。だけど、それを信じる人は誰もいなかったらしい。
それに、旧華族家である西條が後ろにいるなら……潰される可能性が高いからこちらを選ぶに違いない。だから、破棄されたり白紙にされたりと大変な状況になっている。