婚約破棄されたら、高貴な紳士に極上な愛を注がれました。



「そして今日来たのは、陽鈴ちゃんとヨリを戻し霜田へ戻ってもらうことと高田家に口添えをしてもらうため。だが、残念だね。俺の妻になってしまっていたのだから迎え入れることも出来ない。そもそも、俺の色に染め上げた彼女は君の元には戻ることはない」

「……っそんな! でも、陽鈴は、俺のことが好きなはずで……その証拠に君は俺の好みでいてくれた」


 いや、夫婦になるのだから円満な結婚生活のために好みであろうとしただけ。でも本当はあんな格好苦手だったんだけど。


「……霜田さま、私はあなたを一ミリも好きという感情を抱いたことはありませんよ。幼い頃から、旧財閥家の娘として教育は受けておりました。家のために良き妻になるための教育です。なので、私はあなたの好みの妻になるべく務めたまでのこと。それを好きと捉えられてしまったのなら、申し訳ありませんでした」


 私は頭を下げて謝れば、彼は膝から崩れ落ち項垂れた。くっついていた莉来さんは、まさか彼が私とよりを戻そうとしていたことを初めて知ったらしく「なんで、なんで……!?」とブツブツ繰り返していた。


 その後、彼らは何も言わずとぼとぼと帰っていき私の小さな復讐は終わった。
 呆気なかった気もするけれど、長年のモヤモヤが晴れていくのを感じた。そうしてパーティーは進み、主催者の挨拶が壇上にて行われる時間になる。


「……陽鈴ちゃん、これから発表する。よろしく頼むよ」

「分かっております。頑張りましょう」


 これからが彼にとっての復讐の時間――……




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