婚約破棄されたら、高貴な紳士に極上な愛を注がれました。
復讐の終わり
『――この場をお借りして発表することがあります。私、西條透冴は、西條家次期当主及び西條フレグランス取締役社長職を辞職させていただきます』
静かに告げた彼の言葉に、会場にいる全ての人が騒つく。それは当然だ。
西條家嫡男で次期当主だと確実に決定している彼がそれを辞めて、社長職も辞すると発表したのだから当然だ。
「なっ、何を言っているんだ! 急に……!」
そう言ったのは御当主様で彼の父だった。
「俺は、西條フレグランスの社長に就任して二年が経ちました。前社長であるあなたよりも結果を残し、事業拡大により西條を大きくした。しっかりと仕事を残しましたよ」
「……っ! そんな、第一、次に誰が社長をするんだ! 長男で嫡子のお前以外に誰がいる!?」
そう叫ぶと、隣にいた透冴さんの継母がニヤリと笑う。そして想定内な言葉を口にした。
「あら、あなた。わたしたちの息子、彗哉がいるでしょう?」
「確かにそうだが……! だが、長男ではないし後妻で庶民出との間の子だ」
「なっ……! あの子は、血筋の前に優秀ですわ! 透冴さんのように投げ出してはいかないわよ」
そう叫ぶ継母に突然笑い声が響いた。その主は、まさかの彗哉さんだった。