幼い頃、ゆびきりをした人は次期社長候補のあなたでした

社長室に戻ると怜花ちゃんはそのまま副社長についてねと言われた。

「社長、その…息子さんは副社長になることをどう思われてるんですか?」

「実は手術をすると話したら自分から戻りたいと言ったんだよ」

「自分からですか?」

予定より5年早かったが会長もやる気のある時にやらせるのもいいだろうと言ったらしい。

「いずれ焼肉の龍臣(りゅうじん)の方をまかそうと思ってたからね、店長も若い人が多いし」

「そうですね」

「怜花ちゃんにも迷惑かけるけどダメなとこは気にせず言っていいからね」

「まだ私も新人です(笑)」



5月5日の子供の日、ゴールデンウィークの最終日、怜花は出かける支度をしていた。

「あら、どこか行くの?」
「会社」
「スーツは?」
「今日は普段着でいいって」

明日から社長の息子が出勤になるため、今日会社に来て案内をしてあげて欲しいと休みに入る前に社長からお願いされていたのだ。

「そうか、雅臣(まさおみ)くんが戻ってくるのか」

お父さんが独り言を言っていた。

神谷雅臣(かみやまさおみ)

社長の二男でシンガポール勤務、大学も向こうだったので日本には帰ってきてなくてまだ会っていない…

シンガポールでの龍臣の進出は凄く好調でどうやら彼の業績らしいとは聞いている。
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