秘めごとは突然に。
いつも黒マスクをしてるから顔が把握できてない、というか見たことがない。絶対に運動(体育)はやらないマン。席の位置は3年間ずっと一緒で、後の窓際って固定されている。四六時中ヘッドホンをしてて、休み時間はいつもスウィッチでゲーム。友達らしき人は……多分いない──。

挙げたらキリがなくなるし、宮腰くんの陰キャ具合が露骨に出てちょっと可哀想になっちゃうから、この辺でやめておこう。

まあ、でも……いつだって宮腰くんは堂々としてるし、オドオドしてるところも見たことはない……。それにめちゃくちゃ陰キャって言うよりは、『陰キャ風』という表現の方が正しいのかもしれない。

だから宮腰くんはきっと、自身の『陰キャ』に誇りを持っているタイプなんだと思う。素敵なことだよね、何かを極めて誇りを持つなんてさ……って、話が脱線するっての。


「宮腰くん、喧嘩とは無縁の世界で生きてきたよね?もちろん」

「……ああ、そういうこと?」

「この状況、そうでしかなくない?」

「ああ、まあ……そうかもね。そんなこと言ったら篠宮さんだってそうでしょ?」

「ま、まあ、そうだけどさ」


すると、あろうことか宮腰くんが私の前に出た。私を庇うように──。


「ちょっ、宮腰くん!」


ねえ、宮腰くん。多分、アニメの観すぎだよ!?このシチュエーション!!


「篠宮さんはもう帰っていいよ?お疲れ様」

「な、なに言ってっ……!?」

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