秘めごとは突然に。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
宮腰くん何処に行っちゃったんだろう。にしても、足速すぎでしょ。体育とか参加してるの見たことないし、そもそも宮腰くんが活発に動いてるところなんて一切見たことがない。じーーっとしてることの方が断然多い。とんでもなく運動音痴なのかな?って思ってたんだけど、全くそうではなかったらしい。
「はぁっ、はぁっ、あーー、しんどっ!!」
こんな全速力で走ったの久々だわ。辺りを見渡しても宮腰くんの姿も無ければ、あのヤクザの姿もない。
「えーーっと、こういう時に行くお決まりの場所と言えば──」
まあ、こういう時の定番ってやっぱりーー『路地裏』だよね。むしろ路地裏以外ありえないでしょってくらいド定番だよね。えーーっと、この辺りで人気の少ない路地裏……かあ。
私は何となくで心当たりのある路地裏へ向かった──。
「ここの角を曲がったらぁ……」
角を曲がった先、まだ暗くなる時間帯でもないのにとても薄暗くて、ちょっと不気味な雰囲気が漂う路地裏。そこにいたのは──。
「やっぱり居た……もお、宮腰くん。急にガンダするんだもん、びっくり……し……た……」
私に背を向けて立っている宮腰くん。そんな宮腰くんに何気なく近付こうとして、私の足はピタッと止まった──。
なんだろう……これ以上、宮腰くんに近付いちゃいけない気がしてならない。脳が、体が、危険信号を発して、私の『本能』が宮腰くんを拒絶している──。