秘めごとは突然に。
異様な緊張感に満ち溢れて、ピリピリとした空気感に膝が震えて体がすくむ。あそこに立っているのは、本当に宮腰くんなのだろうか。


「……ああ、篠宮さん。やっぱり来ちゃったか」


緊張からか金縛りにあったみたいに体が硬直して動かない。


「君にはあまり血腥いところを見せたくなかったんだけど」


こっちへ振り向こうとする宮腰くんを見て、私の体はギュッと一気に強ばると同時に、いつでも駆け出せるようにつま先に力が入った。

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……と心臓の音が煩い。


「ねえ、篠宮さん……今の見てた?」


見てない、なにも見てないよ。


「ねえ、篠宮さん……見ちゃった?」


見てない、なにも見てないよ、絶対に見てない。


──── そして、完全に私の方へ振り向ききった宮腰くんの姿を見て驚愕した。


血だらけで、その血はおそらく宮腰くんのものではない。要は『返り血』というやつだと思う。……薄暗いから地面が見にくいけど、宮腰くんの少し先にナニかがある……というか、誰かが倒れている。

ねえ、その人……生きてる?生きてるよね?

もしかして、その人……死んでる?死んでるの?


あのヤクザを宮腰くんが殺ったの──?


ねえ、宮腰くんって、まさか……殺し屋だったりする?



──── 殺し屋は突然に。


ヤバい、これはヤバいって、冗談抜きで……ヤバい──。

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