秘めごとは突然に。
無表情なんだけどジト目で、口元だけニヤッとさせながら怪しげに笑って倒れているヤクザを見ている宮腰くん。


「で、どうしようか」


私には優しい笑みを向けてくる宮腰くんに調子が狂う。怖い人なのか、優しい人なのか判断がつかないっていうか、判断が鈍る。


「俺は君の指示に従うよ。君があの人を殺せって言うなら殺すし、生かせって言うのならそうするよ?」

「こ、殺さないであげて……ください」

「ハハッ。なんで敬語?本当に可愛いね。篠宮さんは」


私を可愛いと言った宮腰くんの表情はとても穏やかで、勘違いも甚だしいとは思うけど──『愛してる』って、そう言われてるみたいだと錯覚してしまった。きっと私はどうかしてる。


「ま、篠宮さんがそう言うのならそうしようか。組の奴に片付けさせるよ」


そう言うとスマホを取り出して誰かに電話をかけている宮腰くん。電話が終わって少しすると数人の男達が現れて、血だらけのヤクザを連れていった。


「あ、国枝さん」

「なんでしょう、若」


『組の奴』『若』『異様な雰囲気』『異常な強さ』……点と点が徐々に繋がっていく──。宮腰くんって『殺し屋』っていうか……『ヤクザ』なんじゃないの?


「ナイフ貸してくれます?」

「どうぞ」

「どうも。じゃ、先行っててください。俺は篠宮さんとすることがあるから」

「御意」


国枝と呼ばれた人物は私達よりもひと回りくらい年上そうだったけど、私なんかにも頭を下げてくれて、とても腰の低そうな感じの人だった。


──── いや、待って。そのナイフ……何に使う気?

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