秘めごとは突然に。
──── 『好き』とか『愛してる』なんて感情はもうとっくに無い。なにかしらの感情があるとするなら、それはただの『同情』。
毎回『別れたくない』と縋ってくる彼に、結局は『情』というものが邪魔をしてきて、最終的には全てを許してきてしまった。いや、許してはないんだけど。ま、私にも責任は多少なりある。甘かったんだ、私は。
幼馴染みで、少し複雑な家庭環境で育った彼を『かわいそう』とか『あわれみ』の思いやりで、なんとか今日まで関係をつづけてきたに過ぎない。
何度も、何度も、裏切られては傷付いて、それでも彼を捨てきれなかった私が悪いってことかな?まあ、でも……捨てたくても、捨てれないって場合もあるじゃん。
「美波がデートに誘ってくるなんて珍しいよな」
たまーに訪れるファミレスでメニュー表を見ながら、嬉しそうな表情を浮かべている彼には申し訳ないけど、今から私はあなたを捨てます──。ごめんね?でも、もう本当にいらないの。
「ねえ、文哉」
「ん?」
「私達、付き合って何年だっけ」
「中1からだろ?もう5年か~」
いつの頃からだろう、文哉のことを『恋人』だと思えなくなったのは──。ああ、1回目の浮気をした時だったな。あれは高1の頃だったから、もう2年間も『同情』で一緒にいるってわけか。
もうダメでしょ、こんなの──。全部終わりにしよ?
──── 決別は突然に。