秘めごとは突然に。
国枝さんから受け取った折りたたみナイフを何故か私に差し出してきた宮腰くん。
「な、なに……?」
「ごめん、篠宮さん。もう我慢できそうにないんだ」
「が、まん……?」
「君が俺を助けようとしてここへ来てくれた……その事実が、現実が俺を高揚させるんだ。だからもう、我慢ができない。今、すごく興奮してる」
目を細めて、うっとりした表情で私を眺めている宮腰くん。そんな宮腰くんに不覚にもドキッと胸を弾ませてしまった。
どう考えたってヤバい人なのに──。
「食べていいかな、君のこと」
「……は?」
「喰らい尽くしたいんだ。篠宮さんのことを」
「いや、何を言ってっ……」
「ごめん、もう無理。本気で嫌だったらコレで俺を刺して逃げて?」
「は?ちょっ、……!?」
私に折りたたみナイフを握らせて、私の頭を抱えるようにして唇を奪ってきた宮腰くん。なにがなんだか状態の私は完全に思考が停止した。
片手にはナイフを持っていて、宮腰くんと唇を重ね合っている……いや、どういう状況?ただただ理解が追いつかず、棒のように立ち尽くす私。
チュッと控えめなリップ音と共に、少しだけ宮腰くんが離れた。相変わらず私の頭を抱えてはいるけど──。
「ようやく……ようやく君が手に入る。愛してるよ、篠宮さん」
──── アイシテルヨ、シノミヤサン……?
おそらくアホ面でポーーッとしている私を見て、クスッと優しく笑って再び唇を重ね合わせてきた。