秘めごとは突然に。
「篠宮さん、ごめん。ちょっと待ってて」
そう言うと、何処かへ行ってしまった瀧川くん。背中にあった手の温もりと優しさが消えて、それが妙に寂しくて虚しくて辛かった。
このまま置いていかれるのかな。
さっきまでの言葉は全部嘘だった?
そんなことばかりが頭をよぎる。別に付き合ってもなければ何でもないのにね。
「篠宮さん。はい、これ……よかったら口すすぐのに使って」
背を向け、しゃがんでうつ向く私に買ってきてくれたであろうペットボトルのお茶を差し出してきた瀧川くん。……ねえ、こういう時って水が相場じゃない?とか冷静に思う私もちょっとおかしいのかもしれない。
──── なにより、これを買って戻ってきてくれた瀧川くんの優しさに胸がいっぱいになって、また涙が溢れてきてた。もうどうしちゃったんだろう、私。おかしいな、ほんっと。
「……っ、ありがとう」
「ごめんね、篠宮さん。嫌な思いさせちゃって」
「ううん」
瀧川くんからお茶を受け取って、口を数回すすいでから数口お茶を飲んだ。
「ねえ、篠宮さん。こんなこと聞いていいのか分からないけど、なんで……どうして泣いてたの?」
私の背後でそう言った瀧川くんは今、どんな表情をしているのかな。
文哉と瀧川くんを重ねて……なんて言えるわけがない。
「ごめん。なんでもっ……」
「悪いけど、他の男と比べないでほしい。俺は他の男とは違う」