秘めごとは突然に。
瀧川くんはなんでもお見通しなの?だったらこんな嘘は通用しないね。


「ごめん……」

「ずっと、ずっと、我慢してたんだ。君を好きになった瞬間から俺の失恋は確定してた。篠宮さんは既に他の誰かのものだったでしょ?だから、何度も諦めようとしたし、忘れようともした。何度も何度も君を奪ってやろうとも思ったよ。でもさ、君のことが好きだから、君を悲しませるのも泣かせるのも困らせることもしたくなかったんだ」


瀧川くんはどこまでも優しい。

なんで彼氏持ちだった私を、特に取り柄もない私を、そんなにも好きでいてくれたの──?


「だから俺は、君が幸せならそれでいいって……そう思っていたのに、君は全然幸せそうじゃなくて、辛そうで、しんどそうで──。それでも別れを選択しない君の判断を俺は受け入れるしかなかったんだ。毎日同じ空間に君が居て、俺の視界にはいつも君が居て──。手が届きそうで、届かなかった。喉から手が出るほど欲しくてたまらなかったのに、君が手に入ることは無かった」


瀧川くんの気持ちに気づくはずもなくて、こんなにも想ってくれている人がこんなにも近くにいたのに──。


「篠宮さんがあの人と別れたって話を聞いた時、悪いけどチャンスだと思った。このチャンスを逃すわけにはいかないって。だから色々と考えてたよ?どう接点を作ろうか……とかさ?本名も素性もこの正体も、卑怯だけど確実に篠宮が手に入るまでは黙っているつもりだった」

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