追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
私の帰る場所は、ここではないようです
お兄様の足は順調に回復した。嫌々ながらに薬を飲み、鍼治療を受け、まだ走れるまでには回復していないが、違和感なく歩けるようにはなっていた。
これから足が完全に回復するまでは、申し訳ないがまずい薬を続けてもらわなければならない。
「アンのおかげだよ!本当にありがとう!」
お兄様はそう言って、嬉しそうに飛び跳ねる。慌てた私は、
「お兄様!まだ安静にしていてください。
足に負荷をかけないように!」
必死で止めた。
正直治るか不安だったが、ここまで元気になってくれて嬉しかった。
そして、あまり治療院に来なくなったジョーに変わって、お兄様が薬草園の水やりや片付けをしてくれる。その心遣いは嬉しいのだが、ジョーに会う頻度が減ってしまったのは寂しかった。
そして、ジョーとの別れも刻一刻と迫ってきている。ジョーは予想以上にダメージを負っていないようで、それがまた私を苦しめた。
「アン、僕も元気になってきたから、週末には帰ろうと思う。
これ以上領地を留守にしてはいけないからね」
「分かりました」
そう答えながら、このオストワル辺境伯領にいられるのもあと少しかと寂しく思う。
私は、このオストワル辺境伯領が大好きだった。自然に恵まれ、優しい人たちに囲まれ、ジョーがいて……だけどこの地から私がいなくなっても、ジョーをはじめとする人々は、いつも通りの日々を過ごすのだろう。