追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「アンちゃんがいなくなるなんて寂しいわ」
ソフィアさんが悲しそうな顔をする。
「アンちゃんのおかげでこの地の人々は救われたし、私だってすごく勉強になったわ」
「ありがとうございます」
私のほうが、ソフィアさんに感謝してもしきれないほどだ。
急に現れた見ず知らずの私を雇ってくれたし、年下で後輩の生意気な私の意見も聞いてくれた。……素直に認めてくれた。
「私こそ、ありがとうございました。
ソフィアさんにお会い出来て良かったです」
本当に、心からそう思う。ソフィアさんが私を受け入れてくれたから、今の私がいるのだ。
だけど……欲を言うと、ジョーからもそんな言葉を聞きたかった。私がいなくなると寂しいとか……行かないで欲しいとか。私のことを好きだと言ったのに、今のジョーは私を避けているほどだ。
「アンちゃん、最近元気ないけど大丈夫?」
ソフィアさんが遠慮がちに聞く。元気がないのは分かっていたが、必死でなんでもないふりをしていた。だけど、ソフィアさんには分かってしまっていたのだ。
「すみません、みなさんとお別れするのが寂しくて……
でも、これから元気に頑張ります!」
「そう……」
ソフィアさんは、なおもじっと私を見つめている。心の奥底まで見透かされてしまいそうな錯覚に陥り、わざと元気な笑顔を作った。