追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「アンちゃんは、ジョセフ様が好きなのね」
ソフィアさんの急な言葉に、
「えっ!?」
思わず声を上げてしまった。そして、その言葉を理解すると同時にかぁーっと顔に血が上る。
私は、ソフィアさんにジョーとの恋愛話をしたことはない。それなのに、ソフィアさんは知っていたのだ。
「ちっ、違います!」
慌てて否定するが、ソフィアさんは楽しそうで、それでいてせつなげな瞳で私を見ている。
「ジョセフ様がアンちゃんを大好きなのは知っていたけど、ジョセフ様が来なくなってから、アンちゃんはずっと暗いわ」
ソフィアさんにはバレバレだったのだ。私は間違いなくジョーに恋しているし、会えなくて寂しい。だけど、これからもずっと会えない日が続くのだ。
「ねえ、アンちゃん。
……悪いこと言わないから、オストワルに残らない?
そのほうが、ジョセフ様にとってもアンちゃんにとっても幸せだと思うよ」
きっと、私にとっては幸せだろう。だけど、こうやって引き止めてくれるのはいつもソフィアさんや街の人で、ジョーからはそんな話さえ聞いたことがない。
それが、私が悩んでいる一番の理由だ。
「ジョーは、私がいなくてもきっと平気です」
そうだよね。最強の騎士団長が、一人の女性がいなくなるだけで心を痛めていたら、騎士団は成り立たないだろう。
ソフィアさんは、なおも
「そんなことないと思うけどなぁ……」
なんて譲らなかったが、そんな言葉をジョーの口から聞きたかったものだ。
「ソフィアさんに、手紙を書きますね。
ポーレット領の近くに来られることがあったら、ぜひ遊びに来てください!」
努めて元気に振る舞った。