追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
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出発日の朝……
私は、大勢の人に見送られて馬車へと向かった。歩く私のもとに、私が治療した人々が駆け寄ってくる。
「アンちゃん!元気でね!」
「向こうに着いても、お兄様と元気にしてるんだよ!」
そんな言葉が嬉しかった。
だが、
「アンちゃん!?ジョセフ様と結婚するんじゃなかったの?」
当然、そんなことを聞いてくる人もいる。例外なく胸がズキっとした。
結婚出来ればどんなに幸せだったのだろう。今や公爵家のものとなった私は、ジョーとの結婚に障害はないはずだ。だが、肝心のジョーがその気がないらしい。結局、私はそこまでの相手だったのだろう。
「結婚しません」
私は苦笑いをして答える。平静に、平静にと自分に言い聞かせながら。