追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


◆◆◆◆◆



 出発日の朝……


 私は、大勢の人に見送られて馬車へと向かった。歩く私のもとに、私が治療した人々が駆け寄ってくる。

「アンちゃん!元気でね!」

「向こうに着いても、お兄様と元気にしてるんだよ!」

 そんな言葉が嬉しかった。

 だが、

「アンちゃん!?ジョセフ様と結婚するんじゃなかったの?」

当然、そんなことを聞いてくる人もいる。例外なく胸がズキっとした。
 結婚出来ればどんなに幸せだったのだろう。今や公爵家のものとなった私は、ジョーとの結婚に障害はないはずだ。だが、肝心のジョーがその気がないらしい。結局、私はそこまでの相手だったのだろう。

「結婚しません」

 私は苦笑いをして答える。平静に、平静にと自分に言い聞かせながら。

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