追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「吹かせるか!」

 黒い騎士たちは叫びお兄様を攻撃しようとするが、ポーレット領騎士団がそれを守る。そしてお兄様はラッパに口を付け、力いっぱい吹いた。

 晴れた空に響いた騎士団のラッパの音は、周りの山々に反響して大きく響く。澄んだ大きなラッパが響き渡る空の下、ジョーが黒い騎士たちを次々と打ち負かしていく。防具すら身につけていないジョーは、黒い鎧の騎士をまるで子供でも相手にしているように吹っ飛ばす。私は、そんなジョーの姿にただ見惚れていた。
 

 だが……黒い騎士たちは、数の上で圧倒的に有利だ。防具すら身につけていないジョーは、剣一つでその身を守っている。そのため、時折敵の剣が当たるようで、顔を歪め必死に耐えている。いつの間にか隊服の背中が破れ、血が滲んでいた。

 さすがのジョーでも、この圧倒的多数の敵には勝てないのかもしれない。だけどジョーの負けは、ジョーの死を意味する。そもそも、ジョーを危険に追いやったのは私だ。ジョーを死なせてはいけない!


 私は落ちている短剣を拾い上げる。私に出来るか分からないが……それを精一杯投げた。
 私が投げた短剣は、ジョーを背後から狙っていた黒い騎士の鎧にガンッと音を立てて当たった。そして黒い騎士は、

「このクソ女!!」

怒りの矛先を私に向けた。そしてそのまま、剣を私に向けて突進してくる。 

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