追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
 ジョーを少しでも守ろうと思ったのに、いざターゲットにされると言いようのない恐怖が襲った。丸腰で突っ立つ私に突進するこの騎士は……カーンといい音を立ててジョーの剣に跳ね飛ばされた。そして、ジョーは私の前まで来て、ぎゅっと私を抱きしめる。

「アン!もう離さないから!」

 ジョーは私を抱きしめたまま、片手で剣を振るった。私はその体にしがみついたまま、幸せを感じている。

「アン!結婚してくれ!俺の側にいてくれ!!」

 ジョーがあまりにも普通に言うから、その言葉が信じられなかった。だけど、それはずっとずっと私が待っていた言葉だった。

「ありがとう、ジョー」

 ジョーに抱きしめられたまま、真っ赤な顔で告げる。その間にも、ジョーは片手間みたいに右手で剣を振るっている。ジョーはその噂通り、私の想像の遥か上をいく強さなのだろう。

「ジョー、大好きだよ!」

 思わずそう告げると、ジョーはすごく嬉しそうに笑ってくれる。この笑顔が大好きだ。命が尽きるまで、このジョーの笑顔をずっと見ていたい。


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