追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

 王宮で仕事をしている時は、こんなにも人から感謝されたことはなかった。具合の悪い人を治療する、それ自体が薬師の仕事であり存在価値だから。
 当然のことなのに、こんなにも感謝されるだなんて。

「あっ、あの!ジョーこそ、狼を追い払ってくれてありがとう」

 ジョーの戦う姿を見て、勇者様かと思いました、なんて言葉が出かかった。

「そっ、それに!こんなに美味しそうな肉や魚まで……」

 コオロギ生活が現実にならなくて良かったと、心から思う。
 でも……待てよ。肉ってまさか、昨日襲撃されたオオカミの肉ではないよね!?

 私はどんな顔をして肉を見ていたのだろう。きっと、嬉しさと不安が混ざった顔だったのだろう。ジョーはこんな私を面白そうに見て笑った。

「そこに池があったから、魚を捕った。肉はウサギ肉だ。
俺にはこのくらいしか出来ないが……」


 もしかして、濡れているのは潜って魚を捕ったのだろうか。なんというサバイバル能力の高さだろう。
 ……分かった。ジョーは冒険家なのだろう。冒険の途中で倒れてしまったのだ。


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