追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「私こそ……いつもジョーに助けられる」
そう。オオカミの群れからも、山賊からも、黒い騎士たちからも守ってくれた。
「当然だ。忠誠を誓ったから」
ジョーを見ると、彼はまだ私に向かって両腕を伸ばしている。私がそこに収まらない限り、伸ばし続けるのだろうか。
そして、私が簡単には収まらないと分かると、ジョーは次の手に出る。
「おいで、アン」
酷く甘ったるい声で私を呼ぶのだ。
「ぎゅっとさせて」
そんな、子供みたいなことを言わないで欲しい。人々が恐れる最強の騎士ジョセフ様は、私の前では駄々っ子だというのか。
仕方なくジョーに近寄ると、そっと、だけど強く強く抱きしめられる。大好きなジョーの香りと、その強い体のせいで、私の頭はくらくらする。まるで麻薬でも使ったかのように、ジョーしか見えなくなる。
ジョーは私を抱きしめ、愛しそうに頬を合わせる。そして、耳元で囁いた。
「アン……もう一度、しっかりと言わせてくれ。
俺と、結婚してくれ」
胸が痛い。ドキドキが止まらない。
「せっかく再会出来たのに、ヘンリーには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でも、アンがいなければ、俺は駄目だ。俺はアンを愛している。アンと共に生きたい」
この、まっすぐな言葉がぐいぐい突き刺さる。そして、幸せな気持ちでいっぱいになる。
もちろん、私の答えは決まっている。
「ありがとう!嬉しい!」
ジョーは目を細めて、嬉しそうに私を見た。そしてまたきつく抱きしめ、唇を重ねた。
ジョーを失ってよく分かった。私は、予想以上にジョーがいなきゃ駄目なのだと。お兄様は悲しむかもしれないが、きっと分かってくださるだろう。