追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 ソフィアさんと談笑していると、薬草園へ散歩に出かけて行ったお兄様が帰ってきた。手にはなぜか、大量の焼き菓子やらチョコレートやらを持っている。

「ど、どうされたのですか?」

 思わず聞くと、お兄様は嬉しそうに教えてくれた。

「僕、どうやらこの地で人気者みたいで。
 ジョーを救ったアンの兄って言われて、たくさんお礼もらったんだよ」

 一番の人気者は、この街を守っているジョーなのかもしれないが……お兄様が嬉しそうなので、何も言わないでおくことにした。

「ジョーにあげたら喜ぶかな?」

「駄目です。チョコレートを食べると、痛み止めの効果が落ちてしまいますから」

 そうやってお兄様を嗜めながらも、幸せだなあと思った。こうやって、ジョーやお兄様が生きてくれているだけで、私はとても幸せだ。

「さあ、お兄様!二階に上がってください。
 明日からはリハビリとして、さらに動いてもらいますよ。
 ……ジョーが元気になったら、一緒に剣の練習をするのもいいですね」

「ジョーは駄目だよ。
 どうせ僕、ジョーにボコボコにやられるから」

 お兄様はそう言い残して、ジョーとお兄様のベッドのある二階へ上がっていった。私はお兄様が消えていった階段を見上げながら微笑んでいた。

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