追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
彼から求愛されました
ジョーもお兄様も、順調に回復していった。
ジョーが大怪我をしてから一週間後……まだ古傷は痛むはずなのに、ジョーがなんと剣の稽古をし始めた。広大な薬草園で、お兄様相手に軽やかに剣を振るっている。
カキーンと乾いた音が鳴り、お兄様の剣はいとも容易く吹っ飛んだ。
「また負けた。ジョーに勝とうなんて、百年早いなぁ」
残念そうに告げるお兄様に、ジョーは笑顔で言う。
「ヘンリーもなかなかの腕だ。
その腕なら、オストワル辺境伯領の第一騎士団には入れる」
「でも、騎士団長にはなれないでしょ?」
お兄様の言葉に、ジョーは苦笑いした。
お兄様が国内最強とも言われるオストワル辺境伯領騎士団長になれてしまったら、ジョーの顔が立たないだろう。それでも、お兄様は強かったし、私はお兄様の妹でいて嬉しい。
「二人とも、無理は禁物ですよ」
私は遠くから叫ぶ。また怪我をして、傷口が開いてしまってはいけないからだ。
だが、ジョーは遠くから告げた。
「俺としたことが、得体も知れないあの騎士たちにやられてしまった。
アンを守るために、もっと強くならないといけない」