追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
ジョーがショックを受けているのは分かっていたが、すでに十分だと思う。だいいち、大多数の黒い騎士対ジョーだったのだから、ジョーがやられるに決まっている。
そして、応援に駆けつけたオストワル辺境伯領騎士団の強さは見事だった。自分たちは無傷で、黒い騎士たちを捕らえていた。その騎士団の頂点にいるのだ、ジョーの強さは計り知れない。
ジョーはゆっくりと私のほうへ歩いてくる。その顔がしっかり見えるにつれ、ドキドキが大きくなる。
そして手の届くところまで来ると、私の髪をそっと撫でてくれた。
「アン。俺は明日から騎士団に戻ろうと思う。
ここにいると、体が鈍ってしまうから。
……大丈夫だ。無理はしない」
欲を言えばジョーにまだ側にいて欲しい。だが、ジョーに騎士団に戻っていきいき生活してもらうのも大切だ。ただ、無理はしないで欲しい。ジョーが傷付くと、私も傷付くから。
「本当に、無理しないでね」
そう告げると、また頭をそっと撫でてくれた。
この、何でもないジョーと過ごす時間が、とても幸せなのだと思う。ジョーがただいてくれるだけで、毎日がこんなにも楽しいのだ。