追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
命の危険といえば……
「そうだ、ジョー!」
私は、あの黒い騎士の事件後、ずっと考えていたことをジョーに告げた。
「私にも、戦いの仕方教えてよ」
「……は?」
ジョーは、まるで馬鹿な子を見るような目で私を見ている。そんな目で見ないで欲しい。私は慌てて付け加える。
「ほら!ジョーにいつも守れてばかりじゃ駄目だと思ってさあ。
私も、ジョセフ騎士団長の妻に相応しい、強い女になりたいの」
戦っているお兄様やジョーを見て、自分の無力さを思い知った。そして、強い二人に憧れを抱いているのも事実だった。
ジョーはふっと笑い、私の頬にちゅっとキスをする。それで、ぼわっと顔が熱くなる。
「アンは黙って俺に守られていろ。
それに、俺に守られるのが不安だなんて、俺も不甲斐ない男だ」
「そんなことないよ。
そんなつもりで言ったわけじゃない!」
慌てて弁明するが、ジョーは少し悲しげに笑った。きっと、黒い騎士に瀕死の状態にまでされたことが心の傷となっているのだろう。圧倒的多数の黒い騎士たちを相手に、よく耐えたというべきだろうに。
「アンは勇気のある女性だ。俺をオオカミから守ってくれたし、俺を狙う黒い騎士からも庇ってくれた」
その穏やかな声が心地よく響き、時折ちゅっと頬や額に口付けをされる。その度に、私はドキドキして紅くなる。
「でも……アンが望むのなら、一緒に訓練しよう。
今回みたいに、人生何が起きるか分からないから」
そう言うジョーは、心無しが嬉しそうだった。そのまま再び私をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「でも、無理はしないで欲しい。俺が悲しむから」
甘い視線がぶつかった。そして、引かれ合うように唇が重なる。柔らかくて熱いジョーの唇を、嫌というほど堪能した。
長い長いキスの後、火照った顔でジョーを見る。ジョーも頬を染めて余裕のない顔で私を見ている。
「アン……君をはやく、身も心も俺のものにしたい」