追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「それで焦ったサイロン卿は追っ手をかけ、とうとうアンを見つけ出した。
 でも、ここにはオストワル辺境伯領騎士団がいるからね、迂闊に近付けなかったんだよー」

 私はジョーを見上げた。ジョーは、目を細めて私を見下ろしてくれる。
 私の知らないところで、ジョーをはじめとするみんなは、こんなにも私を守ってくれていたのだ。胸が痛む。

「一旦、黒い騎士たちはオストワル辺境伯領から姿を消した。だから僕たちは安心していたんだけど……待ち伏せしていたんだ。
 彼らはこの地にヘンリーが来ていることも、アンがいることも、ちゃんと知っていた」

 そして、セドリック様は頭を下げる。

「僕たちは迂闊だったんだ。あの時、オストワル辺境伯領騎士団が護衛に付かず、ヘンリーとアンを行かせてしまった。
 だから、ごめん。僕たちのせいなんだ」

 もちろん、セドリック様が悪いだなんて思ってもいないし、 むしろ感謝している。私がのんきに過ごしていた間に、こうも守っていてくれたなんて。

「アン。オストワル辺境伯領騎士団長として、俺からも謝る。
 アンを守るはずだったのに、危険に晒してしまった」

 私の隣で頭を垂れるジョーに、そっと手を伸ばした。頬に触れると、口をきゅっと結んで悲しそうな目で私を見る。
 私は、ジョーにこんな顔をさせたくない。

「ありがとう……」

 溢れそうな涙を必死に我慢し、ジョーに告げる。

「こんなにも私を守ってくれて、ありがとう。
 私はジョーをはじめとするオストワルの人々に守られて、本当に幸せです」

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