追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
ジョーは泣きそうな顔のまま、がばっと私を抱きしめた。その強靭な体に抱きしめられ、ジョーの香りに包まれ、いつものように胸がドキドキうるさい。
「じ、ジョー、やめてよ!こんなにみんながいる前で……!!」
それなのに、ジョーは離してくれない。ぎゅうぎゅうに私を抱きしめるから、窒息してしまいそうだ。
こんなジョーと私を見て、セドリック様は面白そうに笑った。
「ジョーがこんなにも女の子に懐くなんて、雪でも降りそうだよー」
セドリック様の言葉に、オストワル辺境伯も厳しい顔のまま笑った。そしてお兄様も。ジョーも、私だって笑っていた。
「サイロン卿は爵位剥奪と大臣の任を降りて、王都の牢に入ることになった。
国王からも、アンに大して近々謝罪されるだろう。アンはもちろん王宮に戻ることも出来るが……」
オストワル辺境伯の言葉に、私は明るく答えていた。
「私、オストワルにいます!
私は、オストワル辺境伯領が大好きです!」
自然に囲まれて、温かい人々と笑って、最強の騎士に守られて……私はこの地で初めて幸せを感じた。そして、これからもずっとオストワルで、ジョーとともにいたい。
「ヘンリー……すまない。
俺にアンをくれ。
アンと結婚させてくれ!」