追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
こうして、私の置かれる環境は、再び目まぐるしく変わっていった。
私はすぐにオストワル辺境伯領騎士団の宿舎の隣にある、騎士団長邸に居を移した。
騎士団長邸は立派な一軒家で、多くの部屋と多くの侍女が揃っている。ジョーは今まで一人でこの大きな一軒家に住んでいたのだろうか。そして、騎士団長がいかに身分が高い者なのか実感した。
私が騎士団長邸に足を踏み入れると、
「奥様、お待ちしておりました」
侍女が一斉に頭を下げる。その中には治療院で診たことがある人もいるし……奥様!?その言葉に飛び上がった。まだ結婚もしていないし、今までのように薬師のアンちゃんのほうがずっとマシだ。
私はずっと平民として暮らしてきたから、こういう特別扱いは苦手だ。
「よ、よろしくお願いします」
引き攣った顔を必死に笑顔にして、頭を下げた。
そして……
「アン!」
奥の扉が開き、ジョーが現れる。
ジョーは勤務中なのだろうか、いつもの見慣れた隊服姿をしていた。いつものことながら、ジョーがすごく嬉しそうに甘く微笑むから、顔が真っ赤になってしまう。そして、相変わらずかっこいいと思う。
こんなにかっこよくて強いジョーと……結婚するんだ。今まで実感がなかったが、この家に来てから少しずつその状況を理解し始めた。