追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「アン、俺はすごく嬉しい」
そんな子供みたいな笑顔で言わなくてもいいのに。そんな無邪気な顔をするから、私は何も反論出来なくなってしまう。
ジョーは私に駆け寄り、ぎゅっと手を握る。不意に握られるものだから、どぎまぎして真っ赤になる。
「アンの部屋は、俺の部屋でいいな?」
……えっ!?と驚いたのも束の間……
「団長……それは駄目です」
部屋の奥から騎士が現れ、ため息混じりにそう告げた。その言葉を聞いてホッとしたのも事実だ。ジョーと同じ部屋で過ごすなんてとんでもない。心の準備もまだ出来ていないのに。
ジョーは騎士を不服そうに見るが、騎士も強かった。
「ジョセフ団長、アン様の名誉を守ってあげてください。
それに私は、セドリック様から団長が暴走しないように見張っているよう、命じられています」
セドリック様はチャラチャラしていると思ったが、意外とジョーよりもまともなのかもしれない。
そして、オストワル辺境伯領随一の凄腕ジョーだが、騎士団の中では和気藹々とやっているのだろう。ジョーはこの騎士から、意外にも酷い言葉を浴びせられていた。
そんな様子を見て、なんだかおかしくて笑ってしまう。