追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

 ジョーは不服そうに私を見て、拗ねた子供みたいに告げた。

「俺が暴走するはずなんてない」

 いや、ジョーは始終暴走していると思うが。だけど、それにも負けないくらい、私だって暴走しているのかもしれない。

「さあ、アン。引っ越しも済んだし、明日からは治療院に行くのだろう。今日はこの家でゆっくり休んだらどうだ?
 ……俺は夕方には帰るから、一緒に食事でもしよう」

 ジョーは私の前に跪いて、手に唇を当てる。こうやって、いちいち騎士みたいに振る舞うのも罪だ。隊服を着ているのもあり、ジョーがさらにかっこよく見えるから。

 こうやって騎士の振る舞いをするのに、次の瞬間、

「良かったら、一緒に寝るか?」

なんて、あり得ないことを言い始める。だから私も、

「ねっ、寝るはずないでしょう!!」

なんて抗戦することしかできない。
 こうやって必死に抵抗しながらも、もうジョーから離れられないことは知っている。だから、おとなしくジョーの妻となるしかないのだろう。

「行ってきます、アン」

 ジョーは眩しい笑顔で立ち上がり、私を抱きしめ頬にキスをする。例外なく顔が熱くなって、胸がドキドキした。
 私はもうすでに、身も心もジョーのものだ。

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