追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「恐らく大丈夫でしょう。
 誰も団長にダメージを負わせることが出来る人はいませんから」

 そうなんだ……国内最強のオストワル辺境伯領騎士団の中でも、ジョーは極めて強いのだと改めて分かった。
 話を聞く私に、彼は続けて告げる。

「ジョセフ団長は、今まで騎士団に全てを捧げてこられました。騎士団のことを第一に考え、危険な任務でも必ず遂行する。私たちも、団長に何度も命を助けられました。
 団長はこれまで、浮ついた話も一切ありませんでした。そんな団長がアン様に初めて狂っておられるのです。
 私たちは、アン様が団長のことをもっと好きになって欲しいと願うばかりです」

 ジョーは幸せだろう、こんなにも周りの人に愛されて。街の外に出ればジョーは怖い人になってしまうが、本当は誰よりも優しくて誰よりも正義感が強い。私は、こんなジョーに愛されて、幸せで仕方がない。そして、もっと好きになれないほど、十分にジョーが大好きだ。

「ありがとうございます」

 私は騎士に告げる。

「私も彼が幸せになれるよう、頑張ります」

 幸せは一人では成り立たないから……だから、ジョーが私にしてくれたみたいに、私もジョーに愛を返したい。だけど、何かと恥ずかしくなって素直になれない自分もいるのだ。

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