追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる



 このまま、私はこの騎士に連れられて騎士団本部に入った。前にも入ったことはあるが、あの時はジョーと塔に上っただけだった。
 初めて入る騎士団本部は、それは広くて豪華で、多くの騎士が私を見て頭を下げる。しかも、なんと私のことを知っているのだ。

「こんにちは、アン様」

「アン様、これからもよろしくお願いします」

 こちらこそお願いしますと頭を下げながらも、この騎士たちに散々世話になったことも思い出した。黒い騎士が現れた時、ずっと護衛をしてくれていたし……私とヘンリーお兄様が襲われた時も、助けに来てくれた。

「あの……いつも色々と、ありがとうございます」

 おずおずと告げたら、彼らはさらっとした笑顔で答えるのだ。

「ジョセフ団長の命令なら、私たちは喜んで従いますから。
 その前に、ジョセフ団長がアン様を酷く好いていらっしゃるので、私たちは何でも協力したいと思うのです」

 私の予想以上にジョセフ団長は騎士たちに好かれているらしい。こんな様子を見て、私まで嬉しくなってしまうのだった。

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