追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
騎士は私を大きな建物の前に案内した。そして、石で出来た立派なその門をくぐる。そうしている間にも、建物の中からは剣を打ち付け合うような乾いた男と、男性の声が聞こえてくるのだった。それを聞き、騎士たちがここで訓練していることを悟る。
建物の前にいる騎士たちも私に頭を下げ、私も同様に頭を下げる。なかにはやはり、治療院で見たことのある人だっているのだ。
そして……階段を上った先で、急に視界が開けた。目下には広大な闘技場が広がり、騎士たちが剣を振るって訓練をしていた。そしてこんなに騎士がいるとジョーを見つけるのが難しいと思ったが……ジョーは意外とすぐに見つかった。
騎士団長であるジョーは、もちろん部下を従え指導する立場なのだろう。打ち合いをする騎士のもとを歩き回り、何か教えているようだ。そんないつもと違う真剣なジョーを見ると、不覚にもときめいてしまう。
「ジョセフ団長は、幼い時から剣に生きてこられました。幼いジョセフ団長が次々に現役の騎士を打ち負かしていくので、騎士たちも負けてはいられないと訓練を頑張ったものです。
そしてジョセフ団長は問答無用の強さで団長に就任しましたが……この前の黒い騎士との戦いで、精神的ダメージを負ったようです。
ジョセフ様は自分がやられてしまったことにショックを受けたみたいですが、ジョセフ様でなかったら確実に死んでいたでしょう」
「そうなんですね……」
ジョーは自分に厳しく、まさに騎士の鏡だろう。そして、黒い騎士との顛末にショックを受けるのもおかしい。だって、あの時はポーレット領騎士団はかなりの劣勢だったし、ジョーは一人で百人近くを相手にしてすごいと思う。
むしろ反省しないといけないのは、ジョーを危険に晒した私だろう。
打ち合いが終わり、ジョーが騎士たちの中心で話をしている。時々剣を振るったり、構えたりしながら。だが、遠くにいるため何を言っているのか分からなかった。
騎士たちは、そんなジョーの話を真剣な面持ちで頷きながら聞いている。
こうやって、騎士たちをまとめているジョーを見て、改めてすごいと思った。そして、かっこいいとも思う。もちろん外見もかっこいいのだが、内面もすごくかっこいい……