追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
ジョーの号令で、再び騎士たちは打ち合いを始める。今度は四人ほどの騎士がジョーに向かって飛びかかるが……
ジョーは表情一つ変えず、その四人を一瞬で打ち負かしてしまった。あまりに冷静で華麗なジョーの動きから、目が離せない。胸がドキドキする。
オストワル辺境伯領騎士団は、もちろん弱いわけではない。むしろ、王宮騎士団よりも強いと噂されている。その最強騎士団の中でも最強の、第一騎士団の騎士を、こうも簡単に打ち負かしてしまうなんて。
そうこうしているうちにも騎士が次々飛びかかるが、やはりジョーに勝てる人なんていない。真剣な顔のジョーに釘付けだ。ジョーって、戦っている姿もイケメンだ……
不意に顔を上げたジョーと視線がぶつかった。ジョーは驚いたように私を見て、私はぼっと顔に血が上る。その瞬間……カキーン!!大きな音を立てて、部下の騎士の剣がジョーの腕に当たった。あまりの衝撃に顔を歪めるジョーに、
「団長!!」
剣を投げ捨てて駆け寄る騎士たち。そんな様子を見ながら、酷くドキドキしてしまった。ジョーはかっこよかったけど、私のせいだ。私のせいで、ジョーの注意が逸れてしまったのだ。
私を案内してくれた騎士が、額に手を当ててはぁーっとため息をつく。
「ジョセフ団長は最強ですが、アン様が弱点ですからね……」
もう、訓練は見ないでおこうと心に誓った。