追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「それと団長、国王が正式に謝罪されるとのことです。
アン様と王都に来て欲しいとの手紙を預かっています」
彼はそう告げ、ジョーに白い手紙を渡した。ジョーはそれを表情一つ変えずに読んだ。
この騎士は、ジョーを邪魔するために来たわけではなかったのかもしれない。ただ、タイミングが悪かっただけだ。彼はジョーのことを心から慕っているのに、気の毒になるのだった。
「そうか、ありがとう」
ジョーは騎士に告げる。
「それなら、早めにアンと王都へ向かおう。
帰りにポーレット侯爵領に寄って、ヘンリーに結婚式の日取りの報告をしておこう」
「うん……」
ジョーは優しい。こうやって、寂しく一人で領地に帰ったヘンリーお兄様を気遣ってくれるから。こんなに優しくて強いジョーと結婚出来るなんて、幸せだ。
「万が一に備えて、王都に行く前に護身術も教えないとな」
「うん」
「どっちにしても、俺はアンから離れないが」
私は、これからもずっとこうやって甘やかされるのだろう。そして、ますますジョーに溺れていくのだろう。
このジョーのまっすぐな言葉がいつの間にか心地よく、安心するようになってしまった。
私はこの甘い雰囲気に飲まれないように、出来る限り平静を装って告げる。
「ジョー、今日は治療院が休みだから出来なかったけど、傷口のガーゼ交換をしなきゃ」
「それなら、食事後にしてもらおう」
ジョーはそう言って私を離し、またちゅっと頬にキスをする。ジョーは至って普通なのに、私は動揺して真っ赤になる。ジョーはどうしてそんなに平気なのだろう。どうして私だけ、いつまで経っても慣れないのだろう。