追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
親分は一瞬で自分の命の危機に晒されたことを理解すると、一気に青ざめた。そして、まるで死人のように口を開き、生気のなくなった顔で手を挙げる。
ジョーの圧勝だった。山賊が気の毒になるほど、ジョーが強かった。
「おっ、お許しください」
親分は恐怖で裏返った声を上げる。
「ここでお前らを殺すことも出来るが、アンが助けたがっているから許してやる」
ジョーは静かにそう言って、私を見る。その瞳からさきほどの冷たい光は消え、いつも見る温かい笑みを浮かべながら。
そんなジョーを見ていた親分は、突如はっとした顔になる。そして、震える声を漏らした。
「おっ……お前は!
……いや、まさかあの男が、こんなところにいるはずがない」
……あの男?疑問に思う私の前で、ジョーがまた冷たい声で言い放った。
「つべこべ言うな。去れ」
それが合図だった。山賊は一目散に逃げ出し、森の中へと消えていった。ひぃーなんていう、恐怖の叫び声とともに。