追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
その後、ジョーと夕食を食べる。
いつもはソフィアさんに料理を教えてもらって一緒に作って食べたりしていたが、騎士団の炊事係の料理は比べ物にならないほど美味しかった。
そして、二人で豪華なシャンデリアの下ご飯を食べ、庶民ではないことを思い知る。だが、ずっと質素な暮らしをしてきた私にとって、この環境は落ち着かないのだ。たまには豪華な料理を食べるのもいいが、今までのように質素な暮らしのほうが私に合っている。なんだかホームシックになってしまいそうだった。
浮かない顔をしている私に、ジョーは敏感に気付く。そして、
「どうした、アン?何かあったのか?」
心配そうに聞く。
「それとも、俺が何かしたのか?」
私は愚かだ。優しいジョーを、こうやって心配させてしまうから。だから笑顔で何でもないと答えるが、ジョーは見抜いてしまう。
その綺麗な顔で心配そうに私を見ながら、静かに告げた。
「俺とアンは夫婦になる。夫婦の間に隠し事はいけない」
そうだよね……信じられないけど、私はジョーと夫婦になるのだ。だけど、もう少し庶民的な暮らしがしたいなんて言うと、ジョーは幻滅するのではないか。ジョーを傷つけることになるのではないか。
何より、ジョーは今までもこんな暮らしをしてきたのだから。
だから私は、ジョーを傷付けないよう注意して話す。