追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
なんとか食事を終えると、
「次は、俺の傷の消毒だったな」
ジョーは立ち上がる。だから私もつられて立ち上がっていた。そのまま部屋を出て、これまた豪華な階段を上る。
階段を上っていると、不意にジョーと手が触れた。ビクッとして身を引こうとするが、ジョーが強引にも手を絡め取る。そしてそのまま、私に身を寄せた。
ジョーは反則だ。こうやって、不意打ちで色仕掛けをしてくるのだから。そしてジョーの色仕掛けに、私は狂わされっぱなしだ。
「まだ信じられない。アンが一緒にいるなんて」
そして、酷く甘ったるい言葉に身体中を甘い震えが走る。
ジョーは、時々こんな甘い声で話をする。そうすると、私は何も反論出来なくなり、ただ胸のときめきに耐えるしかない。
「黒い騎士たちにやられた日に引き続き、今日も情けない姿を見せてしまったけど、惚れ直させるから」
「情けないって何?」
ジョーはまだ訓練でやられてしまったことを悔やんでいるのか。思わず笑ってしまった。
「情けなくなんてないよ。
ジョーはすごく強いしみんなから慕われていて、最高の指導者だと思ったよ」
くすくす笑いながら告げる私を、ジョーは驚いたように見る。
「私なんかがジョーと釣り合わないって悩んでいたけど、ジョーが私を好きでいてくれるんだもんね。
私も自信を持たなきゃ」