追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 ジョーは真っ赤な顔の私の手を引き、大きな扉を開けた。そこには天蓋の付いた大きなベッドが置かれている。ジョーの寝室だろうか。
 そのベッドの横で、不意にシャツを脱ぎ始めるジョー。もちろん、男女の関係とかそういうものではなく、消毒のためにシャツを脱ぐのだが……不覚にも、鍛え上げられた彫刻みたいなその肉体から目が離せなくなった。

 剣を振るう盛り上がった二の腕、割れた腹筋、そして、爽やかなイケメン……もはや目の前のジョーは神々しいほどだ。
 ジョーとそんな関係になった時、私は耐えられるのだろうか。

 真っ赤な顔の私はジョーを直視出来るはずもなく、必死に見ないようにと消毒薬を取り出す。そして、

「ベッドに下向きに寝てね!」

平静を装って告げるが、その語尾は震えていた。
 ジョーは私の言葉通り、ベッドの上に伏せる。これで綺麗な顔と割れた腹筋を見なくて済むためホッとするが……その広い背中に貼ってある大きなガーゼを見て、ズキンと胸が痛んだ。
 ジョーは私を守ろうとして、こんな深い傷を負ってしまった。

 そっとガーゼを取ると、まだ生々しい傷口が見える。深く抉られていて、ジョーに申し訳ないと思いながら数針縫ったその傷口だ。毎日消毒しているため、化膿していないことだけが幸いだった。
 怪我はまだ全然回復していないのに、ジョーはいつも通り生活して、騎士団にも復帰しているなんて……

「ごめんね、ジョー」

 傷口に消毒薬を付け、新しいガーゼを貼りながら謝っていた。

「ジョーは私のせいで、大怪我を……」

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