追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
国王と騎士たちに謝られました
ジョーが甘すぎるから、治療院でいつもの生活に戻るとホッとする。
だが、街中にはジョーと私が正式に結婚するという事実が、あっという間に流れていた。
「アンちゃーん!オストワルに残ってくれて、ありがとうね!!」
朝一番、ケーキ屋の奥さんが、また大きな包みを持って訪れた。その包みには何が入っているのか大体想像がつくが、私は知らないふりをする。
「こちらこそ、この街に残れて嬉しいです。
みなさんとこうやってお話も出来るし」
そう言いながら、私は剣の稽古で傷ついた子供の処置をする。子供は目を輝かせながら、
「僕は第一騎士団に入るんだ!
ジョセフ様と一緒に戦うんだ!」
なんて言っている。
こんな子供までを虜にするジョーはすごいとつくづく思う。
「そうそう、ジョセフ様と言えば……」
ケーキ屋の奥さんの言葉に身構える私に、彼女は包みを開いて私にそれを見せた。
そこには、私の予想通りの婚約おめでとうケーキがあったのだが、前回と少し仕様が変わっている。ケーキがハート型になっているし、ジョーは騎士団の隊服を着て剣を持っているし。奥さんも、さらにケーキ作りの腕が上がったのだろう。
「このケーキのおかげで、うちの店は大繁盛よ」
奥さんは嬉しそうに言う。
「街中の人が、ジョセフ様とアンちゃんの結婚を喜んでいて、販売開始十分で売れてしまうの。
だから毎日、ケーキを焼きっぱなしだよ」
「それは、このケーキが美味しいからだと思います」
笑顔で告げていた。
ジョーとの結婚が本当になったため、私ももう結婚を否定することはなくなった。そして、何よりも皆さんから祝福されていることが嬉しいのだ。
ジョーは美男で強いため、狙っている女性だっていただろうに。