追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
馬車から降りた私たちを、王宮騎士団が迎えてくれる。王宮騎士団を見て、胸がずきんと痛んだ。王宮を追放された時の恐怖が、まだ心の中にしこりとなって残っているからだ。
「お待ちしておりました!ジョセフ•グランヴォル様!」
一番前にいる騎士が言うが、顔がめちゃくちゃ緊張している。そしてジョーは不機嫌そうに、
「俺ではなく、アンに挨拶しろ」
なんて言い始める。
それで騎士が慌てふためき、
「アン•ポーレット様!!」
付け加える。
もちろん、私はこんな待遇は望んでいない。むしろ、目立たないようにしたいほどだ。前までは騎士に名前すら呼ばれないような対応だったのだから。おまけに、追放される時は騎士に剣を向けられた。
そして、この騎士たちはジョーが怖いのだと思い知る。国内最強と言われるジョーは、騎士たちにとって脅威でしかないのかもしれない。