追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
騎士に連れられて、慣れた王宮の中を歩く。
いつもは来客があると道を開け、頭を下げるのが決まりだった。だが、今日は私が頭を下げらる番だ。
すれ違う人が皆道を開け、頭を下げるのを見ると申し訳ない気分でいっぱいになる。
途中、薬師の先輩に会った。だが、先輩は私に気付くそぶりもなく、他の人と同じように頭を下げるのだ。それで、王宮に居場所はないと悟った。
そして、国王陛下の謁見の間に通された。長い赤いカーペットが敷かれ、両側には騎士たちが並んでいる。そしてその向こうには、見慣れた陛下が椅子に座っていた。
陛下は少し見ないうちに、随分老け込んだみたいだ。
だが、私を見て椅子から立ち上がり、名前を呼んだ。
「アン!」
そのまま前に歩こうとするが、よろめいて再び椅子に腰掛ける。隣にいる側近が、
「陛下!」
と焦っていた。
どうやら陛下の病状は良くないらしい。肝臓をさらに痛めてしまったのだろうか。
だが……
「アン……」
陛下は、椅子に座ったまま私に手を差し伸ばした。私はかつてのように陛下のもとへ駆け寄り、跪く。
「アン……サイロンの件は、アンに本当に申し訳ないことをした。
私からも、詫びさせて欲しい」
陛下はなぜか、私にすごく甘かった。身寄りもなく若い頃から王宮で暮らしているため、同情をしていたのだろう。
陛下が私を祖父のように可愛がってくれるから、私が陛下の薬を運ぶ係となっていた。だから、ああやって嵌められる格好の餌食になったのだろうが。