追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「陛下、そのようなことは言わないでください。
陛下がお元気になられて、何よりです」
跪いたまま、陛下にそう告げた。そんな私に、
「アンよ。頭を上げてくれ」
陛下は弱々しく告げる。
顔を上げた私は、やつれて顔色の悪い陛下と視線がぶつかった。
陛下はやはり、あの頃と同じ優しい祖父の瞳で私を見下ろしている。
「アン……そなたは、私の恩人ガーネットにそっくりだ」
「え……」
ガーネット……それは最近知った、私の母親の名前だ。彼女は結婚前、王宮で薬師長をしていた。
「私が毒にやられた時、ガーネットが助けてくれたのだよ。
だから私は、ガーネットの娘であるアンが、そんなことはしないと思っていた。それなのに、信じてやれなかった」
お母様が恩人だから、陛下は私に優しかったのだろうか。きっとそうなのだろう。
私の特別扱いはお母様のおかげだが、それでもお母様のことを誇りに思っている。私も、お母様みたいな薬師になろうと心から思った。