追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「陛下、気にされないでください」

 私は陛下に笑顔で告げた。

「私が王都を去ったため、ジョセフ様と出会うことが出来ました。
 私は今、ジョセフ様と一緒に居られてとても幸せです」

 陛下は少し寂しそうな顔をし、そして聞く。

「それならば、アンはもう王都に戻ってこないのか?」

「左様でございます。
 ……私の心は、オストワルと共にあります」

 ジョーを見上げると、嬉しそうに目を細めて私を見下ろしてくれる。こんなジョーが隣にいてくれるから、私はずっと幸せに暮らしていけそうだ。
 陛下が王都に戻って欲しいと思ってくださるのは、とても嬉しいのだが。

 陛下は、ジョーのほうをようやく見た。そして、悲しげだが嬉しそうに告げる。

「ジョセフ・グランヴォル。そなたの名は、聞き飽きるほど聞いておる。
 いつも辺境の地で我が国を守ってくれ、感謝しかない。
 今回も、そなたにも多大なる迷惑をかけ、申し訳なく思っている。
 アンがそなたほど名の知れた騎士と結婚することを、私は嬉しく思う」

 ジョーは出発前、陛下のことを敵視し、謝らせてやろうと言っていた。だからどんなことを言い始めるのか不安だったのだが、意外にもおとなしく頭を下げるだけだった。
 陛下が先に謝ったため、ジョーの攻撃心もなくなったのかもしれない。
 そして、陛下がジョーを認め祝福してくださったことも、すごく嬉しい。

 私はまたジョーを見上げ、ふふっと笑ってしまった。すると、やはりジョーも甘くて優しい瞳で私を見下ろす。私はこうして、ジョーと一緒に居られて、とても嬉しい。
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