追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
私は意外にも強いようです
王宮を出てから、すぐ近くにあるというポーレット領へ向かった。すぐ近くと言っても、馬車でニ、三時間の距離だ。そして今日はポーレット領に泊まることになっている。
お兄様に会えるのも嬉しいし、私の故郷を見られるのも嬉しい。何より、ジョーと一緒に行けるのが嬉しいのだ。
馬車の中で色々考えている私に、ジョーは言う。
「アンは、俺が周りから怯えられていても引かないのか?」
「……え?」
思わずジョーを見た。彼はその綺麗な顔に、少し不安げな表情を浮かべている。
私は手を伸ばし、ジョーの頬に触れていた。
「引くはずないよ。
私もジョーの噂なんて聞いたことがなかったから、何を言われているのか分からないけど……
でも、ジョーはいつも優しいし、私のこと大切にしてくれるし。騎士たちからも信頼されているし……」
こんな、不安そうなジョーですら愛しい。ジョーは強いところも弱いところも、全部私に見せてくれている。
「私は、ジョーと結婚出来て幸せだと思うの。
……世界で一番、幸せだよ」
ジョーは一瞬、泣きそうな顔をした。そして、頬に当てる私の手を、ぎゅっと握る。
「アン……愛してる」
ジョーは甘く切なく告げ、大切そうに握った私の手に口付けをする。その一挙一動に、私は真っ赤になる。
「アン、世界で一番愛してる」
そのまま、そっとジョーに抱きしめられた。馬車の中だというのに、外には護衛だっているのに。誰かに見られていないかという不安と、ジョーが甘すぎるのとで、ドキドキが止まらない。
「俺も、アンといられて幸せだ」
甘い言葉に、引かれるように唇を重ねた。
私は、手遅れなほどジョーにはまって抜け出せない。これから死ぬまでずっと、ジョーの甘い寵愛を受けて過ごすのだろう。
私だって、ジョーをうんと愛したい。