追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 改めてお兄様の前に行くと、ジョーと同じように燕尾服を着ているお兄様は、固くジョーと手を握り合う。それでまた歓声が沸き起こった。

「ジョー、アン。今日は婚約披露パーティーだけど、無礼講だよ?
 いっぱい食べて、いっぱい楽しんでいってね」

 お兄様の言葉が嬉しかった。
 お兄様、私はお兄様の妹で本当に幸せです。

 ジョーと一緒に美味しい料理を食べ、お酒も少々嗜み、挨拶回りをした。
 驚いたことに私がこの地にいたことを覚えていた人もいて、大きくなったと喜んでくれた。私の居場所はもちろんオストワル辺境伯領だが、ポーレット侯爵領にも居場所があると分かり、嬉しくなった。
 こんな素敵なパーティーを開いてくださったお兄様に、感謝の気持ちでいっぱいだ。


 ジョーはジョーで有名人のため、強そうな男性に囲まれていた。そして、剣の話や領地の話をしている。
 人々はジョーを屈強な山男だと思っていたようで、爽やかイケメンを目にして驚くばかりだった。そして、ジョーが楽しそうにしているため、私は少し夜風に当たろうと外に出た。

 ポーレット侯爵邸の中は煌びやかに照り輝いてお祭り騒ぎだが、外はもうすでに夜の帳が下りていた。
 水面に反射する舟や家の光がゆらゆらと揺れ、それがなんだか幻想的だった。ここが私の故郷なんだ……

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