追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 ジョーのシャツを掴み、歩いた。ジョーからはしばらく殺気を感じたが、それも次第に治まっていく。そして、人々はやはりジョーを見て、はっと驚くのだ。
 その様子が続くものだから、とうとうジョーに聞いてしまった。

「みんな、ジョーのこと、幽霊だと思っているの?」

「恐らく、そうだろう」

 ジョーは彼のシャツを掴む私の手を、そっと握る。そして当然、どきんとする私。こうやって手を繋いで歩きながら、ジョーは教えてくれた。

「俺は病になり、この街の薬師にかかっても、俺の病気は治らなかった。
 体調は日に日に悪くなり、皆からは不治の病だと言われた」

 その話を、私はただ頷いて聞く。

「この街の薬師によると、王都にいる薬師は腕が良く、数々の患者を救ってきたとのこと。もしかしたら俺の病気を治せるかもしれないと分かり、俺は王都を目指した。

 王都を目指す途中、容態がさらに悪化した。俺は意識朦朧として馬から転げ落ち、山賊に武器や金目のものを奪われ、なんとか逃げた」

 王都の薬師というのは、もちろん私ではなく師匠のことだろう。私なんて師匠には及ばないし、挙げ句の果てに国王殺害の疑いで追放されている……
 その事実を思うと、胸がズキっと痛む。ジョーは私の正体を知ると、きっと酷くがっかりするだろう。

「アン」

 不意に名前を呼ばれ、ぎゅっと引き寄せられた。それで私は、不覚にもジョーの体めがけて倒れることになる。
 こんな私を、ジョーはふわっと抱き止めてくれる。私の胸は、痛んだりきゅんと言ったり忙しい。

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