追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる






 セドリック様から借りた家は、小さめだが一人暮らしには広すぎる家だった。
 街の一等地に建つこの家には浴室やキッチンももちろんあり、二階には白くて清潔なベッドが置いてあった。私はそこに倒れ込んで、久しぶりにぐっすりと眠った。物音も気にせず、安心してぐっすりと……

 夢を見た。夢の中ではまだ、ジョーと旅をしていた。
 交互に睡眠を取り、怖い物音がすればすぐにジョーを起こした。ジョーは眠そうに起き上がるが、すぐに安全を確認してくれる。そして再び眠りにつく。
 私の横ですやすやと眠るジョーの綺麗な顔を見て、これからもずっと一緒にいたいと思った。
 旅を終えても、ずっと一緒に……



◆◆◆◆◆


 次の日……。

 久しぶりにぐっすり眠った私は、朝の眩しい光で目を覚ました。そして、清潔な部屋の中で眠っていたことに気付き、ジョーの故郷にいることを思い出してホッとした。
 カーテンを開けると、前にはオストワル辺境伯領の街並みが広がっている。煉瓦造りの強そうな家々に、家の前は噴水のある広場だ。そして、広場を人々が忙しそうち行き交っていた。

 昨日は暗くてよく見えなかったが、私はこの街並みが好きだ。王都の全てが洗練されて頑強な街並みではなく、よくある地方の平和な街、といったところだろう。

 セドリック様が薬師のソフィアさんを紹介してくださったことを思い出し、急いで身なりを整える。パントリーの中には食材も詰まっており、パンを焼いて食べた。これまた、甘くて美味しいパンでホッとするのだった。
 私がこんな暮らしが出来るのも、ジョーのおかげだ。私は薬師として当然のことをしただけなのに、ジョーはそれの十倍返しをしてくれた。


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