追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
朝食を食べちょうど身なりを整えた頃、家のベルが鳴った。扉を開けると、ドアの外には綺麗な女性が立っている。金色のウェーブがかった髪に、グリーンの瞳。聖女、その言葉がぴったりな女性だ。私よりも年上で、おそらく三十代だろう。
彼女は私を見てにっこりと笑い、礼をした。そして告げる。
「私はこの街の治療院を開いている、薬師のソフィアと申します。
セドリック様から、新しい薬師が入ってくださるとのお話を聞き、伺いました」
「はっ、はい!アンと申します」
慌てて頭を下げながらも、ソフィアさんのあまりの美しさに目を奪われてしまう。
ソフィアさんは美しい上に、おっとりしていて性格もいいのだろう。ソフィアさんを見ていると、自分が酷く惨めでちっぽけな人間であると思ってしまう。
おまけに、ソフィアさんは薬師としても先輩だ。実際、この街の医療を切り盛りしている。ソフィアさんに、アンの腕はたいしたことがないと思われるかもしれないと不安になる。
だが、この街で生きていくのは私が選んだ運命だ。
「お力になれるか分かりませんが、よろしくお願いいたします!」
頭を深々と下げていた。
こんな私を見て、ソフィアさんはふっと笑う。
「アンちゃん。そんなにもかしこまらなくてもいいのよ。
これからは同志として頑張りましょう」
ソフィアさんは、本当にいい人なのだろう。セドリック様から急に薬師を入れてくれと言われても、こうやって私を受け入れてくれるのだから。
だけどソフィアさんは、申し訳なさそうに私に告げるのだ。
「アンちゃん、お疲れのところ本当に悪いんだけど、この国は薬師が不足しているの。今は謎の病気も流行っていて、治療院はパンク寸前だわ。
王都のように、万全の薬師体制が整っていれば良かったのだけど」